今住んでいる賃貸物件から分譲マンションや一戸建ての購入を検討している方が数多いと思います。賃貸物件と分譲マンション、そして一戸建てはそれぞれ特徴があります。一言で「どれがベスト」とは言えません。
日本の不動産物件の経過状況、そして、将来の不動産市況を考えてみました。分譲マンションや一戸建ての購入に興味のある方は読み進めてみてください。
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マンションの価格はロケーションによって変わる
東京都内の港区、千代田区、渋谷区、世田谷区、目黒区に建設されるマンションの価格は総じて5,000万円以上。リフォーム済みの中古マンションでも3,000~4,000万円台。中には1億円前後の物件もあります。それでも、購入希望者は存在します。
管理人が20代に入った頃、東京の目黒区で生活していました。最寄駅は東急東横線の学芸大学駅。
その頃は、まだバブル経済の真っ只中であり、よく電柱に不動産物件の看板が貼り付けられていました。その頃の坪単価は500万円!ほどであった記憶があります。
若者にそのような金額が響くわけがなく、ただ尋常ではない不動産市況を肌で感じていました。
そもそも、人間が不動産を創り出したわけではないし、工業製品のように希望小売価格が設定されているわけでもありません。元々、自然界に存在するあまり価値が無い「もの」の上に人間が住み始めて道路が整備され、線路が敷かれて駅が完成し、町が街へと変貌していきます。
その過程で、場所の利便性が更に人を呼び込んで商業ビルやマンション、家が立ち並んで人口が増加していきます。
都市計画法により、住居系(第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域)商業地、工業地という区分けがなされています。土地の価値を決める要素として、ロケーションの割合が一番大きいのは昔も今も変わりありません。
東京都渋谷区松濤の1坪と北海道富良野の1坪の価格が違うのは、株と同様で需給バランスによるもの。
いくら、富良野に貴重な動植物が生息していても、それは経済価値としては評価されません。大自然が残っている土地は、あくまで観光価値がある場所。
よって、坪単価が高い一等地と、そうではない場所に建つマンションでは、分譲価格に大きな違いがあります。コンクリートと鉄筋の価格は東京でも北海道でも、それほど大きな違いがあるわけではありません。
マンション本体の坪単価と価値は設計によって違いはありますけど、それでも土地の価格ほどの違いがあるわけではありません。
つまり、マンションの価格は第一に、その立地するロケーションによって大きく変わります。次に、建物の設計や内部設備、中古物件ならば築年数やLDK等によって価格が左右されます。
マンションは耐久消費財に近い
土地そのものは単なる場所であり、年数経過による物理的な劣化はありません。しかし、土地の価格は人気、不人気によって株と同様に変動します。かつて人気のエリアが時代の変化と共に人気に陰りが出てくる土地もあれば、逆に時代と共に人気が高まりつつあるエリアもあります。
2011年の3.11のような巨大地震による液状化現象が発生すると、土地の価値は低下します。
その点、マンションは人が作り上げた構造体のため、完成日から確実に物理的な劣化が始まります。形ある物は劣化し壊れていくもので、これは自動車と同じ。マンションは不動産であり、敷地利用権がついているものの、一部を除いてマンションは物理的な劣化が進む耐久消費財という位置付けに近いのです。
耐久消費財の多くは価値が低下して値下がりしていきます。
先の話に戻ると、私が20歳くらいの頃、東京都内の中古マンションが高額で取引されていることに違和感を抱いていました。
当時、古いマンションでも高額で取引されていましたし、これは、ポストに入ってくる不動産屋さんのチラシを見れば手に取るように分かりました。不動産の相場が尋常ではなかったのです。
毎日のように不動産チラシが入ってきたこともあり、迷惑と感じるほどでした。思い起こせば、若者が住む安アパートに不動産チラシをまめにポスティングしていた人は相当ピントがズレていると思いますが。
しかも、目黒区に住んでいると、足立区や葛飾区へ行くことは少なく、よく分からないのに、足立区や葛飾区の不動産チラシをポスティングすること自体、ダブルでピントがズレていると感じたものです。
この現象は富の集中であって、富というものは最終的に不動産と株に集中します。バブルの頃、世の中が金余り状態であったため、そのお金が土地やマンション、株に集中していたのでした。
マンションは老朽化が進んでいくため、管理組合と管理会社が確実に建物の維持管理に努めていく必要があります。もちろん、居住者が月々修繕費を管理組合に積み立てていきます。
マンションでも一戸建ても、新築から15年もすれば細かなトラブルが出てきます。特に、水回りの不具合は想定内ですから、そのような修理はたいした問題ではありません。ゴム製のパッキンや簡単なパイプの交換程度で済むのです。
問題は、コンクリート建築物が新築から10~15年経過すると、外壁塗装と屋上の防水工事の必要性が出てきます。それと同時に外壁のひび割れ問題が出てくることもあります。
マンションの価値はこのあたりから開きが出てきます。
外壁塗装はコンクリートを中性化や水、汚れから守る大切な役割を果たし、10~15年毎の外壁塗装は重要な意味を持ちます。そして、コンクリート建造物の屋上防水工事も大切な意味を持ちます。
マンションの最上階は最も高い価格で販売されていることが多いものの、夏場、天井から熱が伝わり部屋全体を熱します。それほどコンクリートは熱を吸収する素材ですから、ゴム製のシールは過酷な条件下にあります。ゴムは劣化が早い素材であり、年数経過によって確実に硬質化し、ひび割れていきます。
マンションの耐久性は50年ではない
コンクリートの耐用年数は50年以上。ところが、マンションの耐用年数も50年という意味ではないでしょう。50年どころか40年でもどうかと思います。それは、古いビルやマンションに出入りすれば分かります。
昭和の時代に建てられた全てのマンションは築30年以上が経過し、建物が老築化の問題を抱えています。
東京都内の世田谷公園の近くに、都営下馬アパートがあります。これらは、昭和の高度成長期に建設された建物のため、老築化がかなり進んでいます。このアパート群を眺めると、タイムスリップしたような感覚すら抱きます。
築40年も経過すれば、確実に建物の老築化が進み、耐震性の問題も出てきます。
構造体であるコンクリートは先のメンテナンスにより延命させることができます。しかし、時代と共に建物の設備がどんどん古くなっていきます。更に、法改正により、新たな設備が必要とされることもあります。
いつの時代のどの建築物も最新の水回り配管や給湯、空調設備が備えられています。しかし、築20~25年も経過すると、流石に古くなってきます。室内のエアコンを見れば、一目で古さを感じます。かといって、分譲マンションであっても、これらの水回りや給湯、全館空調システムを自由に交換することはできません。
更に、マンションの駐車場は、その時代の平均的な自動車のボディサイズに合わせて設計されています。ところが、時代と共に自動車のボディサイズが拡大し、背が高い軽トールワゴンやミニバンが増えたこともあり、立体駐車場にクルマが入らない問題は珍しくも何ともありません。
このように、建物本体よりも設備が古くなることで、マンションの価値が低下していく傾向があります。箱はあっても住民が住みにくくなっていくのです。
マンション管理組合の機能問題
建物を維持管理していく上で、定期的なメンテナンスを避けて通ることはできません。
ところが、肝心なマンションの管理組合が機能不全に陥っているケースが日本国内で増加しているのが実態です。
高度経済成長期に建設され、30年以上経過しているマンションが増加しています。今後、これらの古いマンションが増えることはあっても減ることは無いのです。
実際、高齢者が多く住むマンションや投資用マンションに管理組合の機能不全問題が発生しています。その数は決して少なくないようです。
建物のメンテナンスを怠ると、急速に老築化していきます。コンクリートは中性化し、ひび割れから入り込む雨水が鉄筋のサビを加速させ、建物の強度が益々低下していきます。
水漏れは言うに及ばず、諸問題が噴出してくるのです。そのような、おんぼろマンションに買い手が付くわけが無く、マンションの価値が暴落していくのです。
映画のブレードランナーをご存知でしょうか。これは、ハリソンフォード主演のSF映画。これは古い映画ながら、個人的に今でも見応えがある映画だと思います。この映画の中で、レプリカント技術者が住む古びたマンションが出てきます。
彼の部屋には生体ロボットが飼われているのですが、その建物は荒れ果てて廊下は水浸し。このような建物はアメリカのデトロイトあたりにゴロゴロしています。
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日本のマンションは供給過剰
日本国内のほとんどのマンションは今、あるいは今後、時間をかけて先のような諸問題に直面していくことになるでしょう。何故なら分譲マンションと賃貸マンション、アパートは供給過剰であり、需要をオーバーしているからです。
世の原理原則として、供給が増えれば価格が下がります。東京都内の人気エリアでは、高額マンションの販売が続くとは思います。ただ、全国的に考えれば、これは一部の世界と言えるでしょう。
理想は一戸建て
理想としては土地を購入し、一戸建てを建てるのが一番なのかもしれません。コストパフォーマンスを考えるなら、新築より中古住宅が狙い目。
建物の管理については、世帯主の考えでどうにでもなります。隣人に相談する必要もありません。管理組合の概念すら無いし、世帯主が管理組合の理事長なのです。
建物の価値はマンションと同様に低下していくものの、きちんとメンテナンスをしていけば、20年や30年程度ではまったく問題はありません。
その時になって、建物の価値はほとんど無いものの、土地の価値は残っています。この日本で買値を上回るような不動産価格の上昇は、一部のエリアを除いてほとんど期待はできないでしょう。しかし、過疎地や何か特別な理由、致命的な理由がある場所を除いて、土地に値段は付くのではないでしょうか。
分譲マンションの価値
仮にマンションを買う場合、3,000万円を固定金利3%で借りて35年ローン(元利均等返済)を組むと、利息総額は1,900万円弱。返済総額は4,900万円弱。
更に、月々の駐車場料金、管理組合費、諸経費を足していくと、35年間で楽々1,000万円をオーバーするはずです。実際にはもっとかかるでしょう。
すると、35年間のトータルで金融機関と諸経費に対して6,000万円オーバーを支払うことになります。
35年間かけて総額6,000万円を支払い、金融機関の抵当権を抹消します。それ以降、そのマンションは自分の所有物となります。長い長い月々の支払いから解放されるのです。ただ、その時点でのマンションの担保能力はどの程度なのでしょうか。
結果として、大金を注ぎ込んで残った資産は、あちこち問題を抱えた古いコンクリートの塊というケースが多いことでしょう。
更に、マンションは共同生活のための大きな箱ですから、予期できない問題が発生する前提で生活していく必要があります。もし、地震発生により建物にヒビが入った場合、住民負担は免れません。
マンション本体と設備が老築化していけば、修繕費が跳ね上がっていきます。
特にタワーマンションは将来の修繕に関しては未知の世界のようです。タワーマンションの場合、足場を組むのは不可能なため、屋上からロープでゴンドラを垂らして外壁の修理が考えられているようです。
これでは、風が強い日や雨の日は作業できません。しかも、作業員がゴンドラという狭いスペースの中で作業を強いられるため、どうしても作業効率が低下するはず。つまり、タワーマンションの外壁修理には膨大な日数と人工代がかかることが今の時点で明らかなのです。
新築から20~25年もすれば、深刻な水回りのトラブルが発生してきます。配管から水が漏れだして、天井から水が降ってくるようなトラブルは珍しくありません。
例えば、35年ローンを組んでマンションを購入し、将来的に引っ越しの必要性が発生したとしましょう。国内に複数の営業拠点を持つ会社の社員ならば、転勤は珍しくありません。ローン中のマンションを売却する際、マンションの売却価格がローン残高を上回るならば、問題はありません。
しかし、多くの場合、ローン残高が売却価格を上回ります。よって、マンションを売却しても住宅ローンが完済できない場合は、足りない分を穴埋めする必要があります。それができなければ、普通に売却しようとしてもできません。
実は、新築マンションを買った時点で損失が発生することが多いのです。新築マンションを購入後、15%ほど価値が下がるケースが多いのです。マンションを売却しなければ、損失が出ないだけ。実質、多くのケースで目に見えない含み損が発生しているのです。
長期ローンを組んで分譲マンションを購入するということは、その所有者は抵当権を設定している金融機関です。分譲マンションは世帯主の所有物ではありません。
例えば、自動車をディーラーローンで購入すれば、車検証の所有者の欄には融資した販売会社の屋号が記載されます。ローンを支払っている間、その自動車の所有者は販売会社です。
ローンが完済し、所有者変更の手続きが終了した時点で、その自動車はあなたの物となります。不動産もこれと同じです。
賃貸物件の数が上昇中
最後に賃貸物件について呟いてみますと、全国的に賃貸物件の数は右肩上がりで増えています。ほとんど、需要を無視するようなかたちで供給が増え続けています。
これは賃借人有利、賃貸人不利の関係が既に始まっています。
管理人は20代の頃、引っ越しで渋々と礼金を払った記憶がありますが、納得したことは一度もありません。賃借人がお客さんですから、逆に大家さんが賃借人に地元名産の1つでも渡して「宜しくお願いします。」と、一言添えてもおかしくは無いでしょう。
さすがに今となっては、礼金不要の賃貸物件が多く、正常な不動産市況になったと思います。礼金制度は住宅難の古い古い時代の悪しき慣習なのです。
このように、賃貸物件の供給過剰が続けば、家賃は下落傾向へ向かいます。人口が密集する三大都市の特定エリアを除き、地方都市の場所によっては家賃の値下げが始まっています。大家さんは礼金の請求なんかは考えられない状況でしょう。
また、賃貸物件の空き部屋が出ると、場所によっては次の賃借人がなかなか決まらない傾向があります。
いずれにしても、賃借人は家賃に金利はかからないし、固定資産税はもちろん不要、建物の修繕費は当然、大家さんの負担です。
3.11、東日本大震災のように巨大地震が発生し、賃貸物件が津波で流されたり傷んでしまったら、賃借人は次の住居を探すだけで済むのです。家財道具は津波で全て全損ながら、健康な体があればそれに感謝し、また一からやり直せばいいのです。
もし、分譲マンションを購入していたらローンが残っていて悲惨なことになります。
賃貸物件の供給過剰がこれからも続いていく以上、賃貸物件を選ぶ人にとっては有利な時代なのかもしれません。
もちろん、賃貸物件に住むからには家賃の支払いが続きます。一方、分譲マンションを購入後、長い長いローンの支払いが完了すれば、それは自分の物になります。
分譲マンションがいいのか、賃貸物件がいいのかは、人それぞれ考え方や経済事情等が絡んでくるため一概に答えが出るものではないと思います。
ただ言えることは、人生の中で計画どおりにはいかない事が多々あります。そのような不確定要素も考慮して、慎重にマンション購入を検討する必要があると思います。
[マイナビ賃貸]
Heedayさん ごきげんよう。
私も築13年になるマンションに住んでいるんですが、
最近、マンションの老朽化を実感しているので、
今回の記事がとても身に沁みました。
頑丈なようで、どんどん劣化が進んでいるんですよね。
メンテナンスについて考えようと思いました。
ためになるご提言をありがとうございます。
Hi こんにちは。
建物の老築化は避けて通れない問題ですね。
お早うございます。
今は賃貸アパートに住んでいる者として将来はマンションに住もうと考えています。
同じマンションでも分譲と賃貸は考えようによっては良くも悪くもあると感じますね。
賃貸に住んでいる者としては毎月賃料は払い続けなければならないけど最悪建物が壊れた後は引っ越しして住み替え
れば済む事を考えると分譲マンションを選ぶとなると難しくなりそうですね。貴重な情報ありがとうございます。
こんにちは。
過去の常識は将来の常識にはならないこともあるようです。