2012年初頭に「食べログ」のやらせ投稿が話題となりました。クチコミの書き込みを代行する業者が40社ほど発覚したのでした。
この仕組みは簡単。
「食べログ」と食べログに登録している「店舗」の間に書き込み代行業者が入り込みます。代行業者は店舗にアプローチし、店舗が提供する食事やサービスに対して高い評価を食べログ上に書き込みます。
店舗は代行業者に対して、その代行料を支払います。
このようなマーケティングは典型的なステマ(ステルス・マーケティング/Stealth marketing)の一つ。
ステマは昨日今日に始まったわけではなく、ネットの普及とともに急速に広がりを見せてきました。古くは2chの世界で始まり、ポータルサイト、コミュニティサイト、ヤフー知恵袋、教えてgoo、OKWave、ブログ、Facebook、ツイッターと拡散を続けてきています。
ステマ=ステルスマーケティング
ステルス/Stealthは「こっそりする、忍んで、内密に」という意味。
ステルス・マーケティングの目的は、ある商品やサービスを「サクラ」や「やらせ」によって持ち上げて情報を拡散させるところにあります。このステマはあまりいい意味では使われていません。
ステマという言葉の明確な定義があるわけではありません。私は世間で使われているステマの意味は、次のように解釈しています。
「商品やサービスのクオリティを実態以上に誇大、または歪曲表現して消費者に伝える倫理的な問題があるグレーなマーケティング。」
あと、商品やサービスの提供者がネット上で自作自演を展開することもありますが、これもステマに入るでしょう。
ステマとサクラの違い
ところで、このステマは昔から存在しています。
・飲食店や店舗に並ぶ「サクラ」
・催眠商法を盛り上げる「サクラ」
・ダイエット商材の一部に見られた「やらせ」
飲食店の前に行列ができれば目立ちます。
誰もが一目で注目の店、美味しい店ではないかと思ってしまいます。では、自分も並んでみようかという心理が働きます。この時、店側は調理の時間を調整して、行列の長さを意図的にコントロールすることもあるでしょう。
私個人的には、この飲食店のサクラが悪質で倫理的に問題があるマーケティングであるとは思えません。これは商売を繁盛させるためのテクニックの1つに近いと思います。
人にはそれぞれ好みがあります。その店の味と値段、雰囲気やサービスに納得できれば、一見さんが将来のリピーターになるかもしれません。逆に、自分の好みに合わなければ、その店に行かないだけです。
いつの時代も「サクラ」や「やらせ」は見られるわけで、ネットの世界はクリックとコピペで簡単に書き込みや評価ができてしまいます。だからこそ、ステマが急速に広がってしまったのでしょう。
進化する消費者
では何故、これほどまでにネット上にステマが広がったのでしょうか。それは、お金を払う消費者の動向が明らかに変化してきたからです。
ネットやスマホが普及するまでは、クチコミ情報を簡単に入手することができませんでした。人から人へ情報を伝達するには時間がかかりますし、終いには頓珍漢な伝言ゲームとなってしまいます。また、どこかで情報が途切れてしまうこともあります。
情報入手に限界があった時代は、商品やサービスの選択にも自ずと限界がありました。
ところが、ネットの普及で消費者は日々進化し、賢くなっていくのです。
YouTubeで昔のテレビCMが出てきたり、部屋を掃除していて古い雑誌の広告を見て笑ってしまうのは、そのマーケティングが稚拙に見えるからです。当時としては最先端の広告であったものの、時代の変化と共にマーケティングが陳腐化していきます。
消費者が賢くなれば、企業の広告に即、反応しなくなっていきます。よって、消費者は気になる商品やサービスの情報をネットで調べ始めるようになります。
そこで、ステマが流行り始めたのです。
ネット情報は玉石混交
いつの時代も企業は商品やサービスを売るために知恵を絞ります。一方、お客さんは騙されないように用心深くなって、情報集めに没頭します。この関係は永遠のものと言えるでしょう。
一消費者が商品やサービスに関する感想を第三者に強いられることなく板に書き込めば、それは純粋なクチコミです。ネット上には、このような純粋なクチコミがあれば、ステマもあります。
それらを見分けるのは容易なことではないし、情報を精査するには手間も時間がかかります。
Googleの検索精度は日々高まりつつあるものの、検索エンジンは情報の精度までは評価できません。質の高いサイトからリンクされて、いいね!ボタンが多くクリックされているサイトでも、そのサイトは必ずしも辞書やバイブルというわけではありません。
特に、ネット初心者はネット上の情報をそのまま鵜呑みにしてしまう傾向がありますが、今も将来も、ネットの書き込み情報を100%鵜呑みにするものではありません。
では、このブログは?
はい、それは、あなたの心に耳を傾けてください。
Googleは世界のサーバー情報を辞書化する野望を持っています。しかし、人間がネットに情報を書き込む以上、100%の情報は存在しません。
自由投稿型のWikipediaであっても、頓珍漢な情報が散見されますし、もしかして、味音痴が食べログに5つ★評価しているかもしれません。インターネットは、そのような世界であるという前提で付き合っていけばいいのではないでしょうか。
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