インターネットが社会のあらゆる物を飲み込んでいる/逃げよう

日常生活に密着した小売店は必須の存在。今日において必須の小売店は、フランチャイズによって運営されているコンビニではないでしょうか。その他にも生活上、必要とされる小売店があります。

この小売店の立ち位置はネット通販の浸透と共に立ち位置が大きく揺らいできました。もちろん、コンビニはニーズにマッチした小売店のため、今後も社会の隙間を埋める役割を担っていくはず。しかし、全体として見ると、小売店の存在意義が問われている時代なのではないでしょうか。

 

コンビニは小売店の隙間を埋めてきた

コンビニは小型店舗であることを武器にして、右肩上がりの成長を続けてきました。自宅からスーパーマーケットや大型ショッピングモールまでは、物理的な距離があります。その隙間を埋めてきたのが街のコンビニ。

コンビニが主に扱う商品は、NB(ナショナルブランド)商品と近年伸びているPB(プライベートブランド)商品。

コンビニは従来の街の隙間を埋めるビジネスであり、その多くは24時間営業。また、NB商品の小売価格は、大型スーパーマーケットと比べて高めです。それでも、多くの人がコンビニを利用する理由は、自分の生活拠点から近い場所、移動中に便利な場所に立地しているから。

多くの人は、コンビニで少々高いお金を払って、利便性も買っていることになります。

 

小売店の存在意義が揺らいでいる

しばらく通らなかった道路を自動車で走行していると、以前まで営業していたコンビニが撤退しているケースが少なくありません。

以前、コンビニ業界について調べたことがあります。フランチャイズ契約というものは、加入者にとって厳しい内容。コンビニ業界はスクラップ&ビルドを繰り返しつつも、適所に根を張った店舗は、今後も鉄板の営業を続けていくように見えます。

ところが、光が当たれば必ず影ができます。

その陰で、従来型の小売店は逆風にさらされつつあります。一口に小売店と言っても、その取り扱い商材は幅広い。

その中で、専門性が高い商材を扱う店舗は別として、NB商品を扱う店舗は良くて現状維持、それ以外は売り上げ減が続いているのが現状ではないでしょうか。

 

小売店の存在意義

書店

 

ところで、何故この世に小売店が存在するのでしょうか。

人が生活を営む上で、あらゆる物資が必要です。物を企画、製造するメーカーの拠点は、日本のみならずアジア諸国まで広範囲に亘ります。

お客さんがメーカーの製造拠点まで、わざわざ足を延ばして物を買いに行くことは不可能です。だからこそ、今まで小売店が存在していました。

 

物の流れは、各業界特有の商習慣によって違いがあるものの、メーカー>一次卸>二次卸といった仲介業者を経て、商品が小売店に並びます。

インターネットが無かった時代は、この流通経路を構築することで、日本全国津々浦々まで、商品を流通させていました。

しかし、今となってはインターネットと高速通信回線の普及により、商品の販路が多様化しています。ECの世界では楽天、Amazon、Yahooが通販市場を押さえていることもあり、手元のスマホから簡単に商品の価格を比較して、その場で注文ができます。

これにより、従来の流通経路の存在意義が揺らいでいるのは、昨日今日に始まった問題ではありません。

 

Windows95が世の中を変えた

インターネットが普及するきっかけとなったのは、ご存知マイクロソフトのWindows95の登場です。

しかし、当時はアナログ回線 + モデムを利用する通信が一般的であったこともあり、日常生活にインターネットが普及していくまで少々時間が必要でした。

2001年あたりから、ソフトバンクやNTTがADSLサービスを開始し、本格的なブロードバンド時代が始まったのです。そして今となっては、光回線が当たり前であり、スマホの通信環境も整備されてきました。

これにより、TPOに関わらず常時、人がインターネットに繋がっています。日本にとって、2001~2002年はインターネット社会の幕開けの年であったのです。

 

インターネットの流通総額は確実に上昇

2013年現在、インターネット市場における流通総額は流通全体の4%ほど。数字だけを見ると大した値ではないかもしれません。しかし、この値は今後、増えていくことが確実視されています。

4%で頭打ちではありません。

今後、インターネットの市場割合が全体の4%が5%、10%と増えていくと、とんでもない事が起き始めます。

そもそも、小売店を含む流通業の粗利率は高いとは言えないでしょう。例えば、あのヤマダ電機の決算が如実に物語っています。

株式会社ヤマダ電機 平成25年3月期、決算短信

http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/kessan/2012/130509_1.pdf (PDFファイル)

 

秋葉原

 

ヤマダ電機は、売上高1兆8千億に達するとてつもないガリバー企業。それでも、営業利益率は2%ほど。途方もない大量仕入れ、大量販売を行っている流通の大手であっても、営業利益が大きいとは言えないのです。

この原因はネット通販社会によって、家電製品の販売競争が熾烈であるから。

 

昭和の時代、お客さんが町の電気屋さんで、品定めする光景がごく普通でした。いつの時代も、誰もが物を上手に買いたいと思います。アナログの時代、商品価格を比較する場合、新聞折込チラシを眺めて数店舗を巡るくらいで、物理的な限界がありました。

しかし、家電量販店の大型化とネット社会によって、町の電気屋さんは、大手量販店の傘下に入った形態をよく見かけます。今となっては、一部を除いて、個人スケールや小規模事業所が家電製品をバンバン売っていけるような時代ではないことを物語っています。

ネット市場の割合が今後、5%、10%と上昇していけば、リアル店舗での売り上げは減少していくことになります。

ヤマダ電機の決算内容からも、いくら大手の家電量販店であっても、前年比でわずかでも売上がダウンすれば、経営に即響くことが窺えます。これは家電製品に限らず、他のJANコードが付いているNB製品は、全て似たような状況に置かれていると考えて大きく間違いはないでしょう。

 

NB/ナショナルブランド

NB商品は歴史と信用があることからも、誰にとっても親しみがあって買いやすい商品。

しかし、このような商品は、先のように熾烈な販売競争下に置かれています。今後、更にスマホが普及していくことはあっても、スマホの利用者が減ることは考えられません。

今の10代から20代は、携帯やPC、デジカメ等のデジタル機器に囲まれて育ってきています。彼らにとって、それらは当たり前の存在であるし、スマホで商品を眺めたり、価格を調べるのは生活の一部です。

 

道路標識

 

ECは従来の小売店を破壊していく

人口構成は、ところてんのように押し出され、順番として高齢者が先に亡くなっていきます。

多くの人が携帯を筆頭としたデジタル機器を使いこなしている以上、商品供給側の販売競争が激化していくのは自然な流れです。

価格.comやプライスチェッカー/Price Checkerアプリ、AmazonモバイルAndroidアプリが市場競争の激化を後押ししているようなもの。これらは、流通そして小売店の存在を否定しているような存在です。

 

Amazonで調べると、「インターネットが社会を破壊する」といった内容の書籍は1つや2つではありません。

私自身、その手の本には目を通していますが、実際、アメリカでは大手のBookストアやDVDレンタルのブロックバスターが破綻しています。これは、AmazonやYouTube、ネット動画配信サービスの影響と無関係ではないはず。

 

しかし、小売店は消えることはない

しかし、子供から高齢者まで、人々が日々の生活を営んでいる以上、生活に密着した日本の小売店が全てインターネットによって破壊されるとは思っていません。ただ、需要と供給が均衡するポイントまで、リアル店舗数が減少していくと思います。

確実に言えるのは、インターネットと通信網の充実は、従来の流通や小売店の存在意義を否定する方向に作用しています。

過去10年間のインターネットの歴史を振り返っても、ECにおけるNB製品の販売競争は激化する一方。現実を直視して冷静に考えれば、今後、日本国内の小売店の数は減少していくのは明らかでしょう。

「小売」という、長らく続いてきた産業構造の転換期が今、訪れていると思います。

 

最後に、

・クルマやバス、電車に乗って買い物に行き、ある店舗ではAという商品の小売価格は21,800円。

・手元のスマホで同じA商品を検索したら、19,800円。送料は600円。

あなたは、どちらで買いますか?

 

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