40代以上のおじさんたちにとって「スカイライン」とはスポーツクーペであり、スポーツセダンのイメージが脳裏に焼き付いていると思います。
2014年初頭、日産自動車がV37スカイラインを発売しました。V37はワイドボディ化され、従来のスカイラインの方向性とは異なるコンセプトのようです。そこで、今までのスカイラインと誕生したV37について呟いてみたいと思います。
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大人がイメージするスカイラインはスポーツクーペ&セダン
管理人が思うスカイラインの最高傑作は1989年から1994年まで生産されたR32だと思います。GT-Rを含めたR32。R32は今の技術水準からすれば、過去の車ではあります。
しかし、R32はボディサイズとデザイン、パッケージング、インテリア、車重、排気量、パワーが上手くバランスしたクルマでした。R32は弟分のシルビアよりずっと上質なクルマ。
一言で言うならば、R32はいい落としどころで設計された上質なクルマだったのです。
R32は今となっては標準的なサイズ
標準のR32は5ナンバーの端正なボディに直列6気筒エンジンが搭載され、駆動方式はFR。サスペンションは前後マルチリンクを採用。
スカイラインGT-R(BNR32)は3ナンバー車両となり、スペックを確認するとボディサイズは全幅1,755mmに対して全長は4,545mm。車重は1,400kg台。
当時、R32GT-Rは随分立派なボディに見えたものです。しかし、今となってはR32GT-Rのボディは標準的なサイズに見えることからも、それだけ日本車のボディが時代と共に拡大化してきた証です。
グローバルなボディサイズ
時代と共に、各自動車メーカーは北米市場をメインとする自動車開発を進めてきました。
より高い衝突安全性能が車に求められてきているため、今や全幅が1,800mm前後の日本車が珍しくありません。ところが、車の全幅が1,800mmを超えると、日本国内のあらゆるシーンで不便さを被ることが多くなります。
全幅が広くなると比例してホイールベースも伸ばされるわけで、とかくUターンが苦手で小回りが利かない車になってしまいます。片側2車線の道路で転回する時、5ナンバーサイズであれば、4WDや一部のFFを除いてまず問題はありません。
しかし、全幅1,800mm以上の自動車ともなると、小回りの利くFRを除いて、交差点での転回が容易ではありません。交差点の中央まで右折レーンを前進してから、一気にステアリングをフル転舵する必要があります。
このようにグローバル化が加速してきた自動車メーカーの経営方針で小回りが利かない車が増加傾向にあるのが残念なところです。
スカイラインはどこへ行く?
日産自動車が2014年初頭、スカイラインを発売しました。
日産自動車のオフィシャルサイトによりますと、V37スカイラインのボディサイズは全幅:1,820mm×全長:4,800mm。車重は1,800kgで最少回転半径は5.6m。
このグローバルサイズのボディにV型6気筒3,500ccエンジン+HVシステム、または直列4気筒2,000cc ターボ付きエンジンを搭載。
駆動方式はFRと4WD(アテーサE-TS)。フロントサスペンションはダブルウィッシュボーンでリヤはマルチリンク。価格は410万円台~600万円台。
ターゲットは40代前半の男性だそうです。
エッ?
本当だろうか?
ズバリ、今現在の40代前半の多くの日本人は、このようなコンセプトのクルマには興味を抱かないと思います。経済的な余裕があって、ハコスカの時代を思い出す50代以上の方はV37スカイラインに関心を持つかもしれません。ただ、購入に至るかどうかは別問題ではないでしょうか。
このV37スカイラインも北米市場を視野に入れたグローバルカーなのです。
スカイラインの名を残した
V37スカイラインのボディデザインは近年の日産テイストをベースにフーガを彷彿させる曲面が与えられています。両者を比べると、スカイラインの方が明らかにスポーティーな印象を受けます。
それにしても、このサイズで1,700~1,800kg台の車重ともなると、スポーツ性は大きくスポイルされてしまうでしょう。いくらハイパワーエンジンを搭載した車であっても、車重が重くなればなるほどスポーツ性は削がれていきます。
地球上の全ての物質には慣性の法則が働いています。重い物体ほど加速、減速、コーナーリングの全てにおいて鈍重さが顔を出します。
強靭な脚力を持つアフリカゾウであっても体重が5~6トンに達する以上、チーターのように俊敏に動くことは不可能。
日本市場ではセダン離れが進み、日本市場にマッチするセダンが少なくなりました。魅力的なセダンが存在しないが故にセダンが売れず、更にセダン離れが進む循環が続いているようです。
あらゆるボディ形状の車の中でセダン作りが一番難しいと言われます。日本の自動車メーカーの多くはセダンから他のボディ形状へとシフトしてきました。今となっては、セダンと言えば欧州車の独壇場。
V37スカイラインの価格帯は先のように400~600万円台。もはや、スカイラインの価格帯を超えています。他の車名を与えても良かったと思うものの、日産が誇る伝統の「スカイライン」の名を消滅させるわけにはいかなかったのかもしれません。
それにしても、この価格帯ともなると、欧州のDセグメントである強豪セダンの価格帯とオーバーラップします。自動車にそれだけ資金を投下できる余裕のある車好きの多くは、候補として真っ先に欧州車を挙げるはず。
それでも、日産は欧州勢と肩を並べる価格帯で打って出てきたことからも、欧州勢と真っ向から戦うつもりでV37スカイラインを開発してきたとも読み取れます。
小さなFRアテンザは?
日本でセダンを売るためには、やはり5ナンバーを意識したボディサイズが望ましいと思います。側面衝突時の安全基準が高まってきた背景から、ワイドボディ化は時代の流れ。日本市場では全幅が1,700mmをオーバーするにしても、最小限に留めてほしく思います。
ボディサイズを大きくすると剛性確保のために更にボディが重くなり、それを支えるサスペンションも太く重くなります。軽量化のために特別な素材を使えば、それは車両価格に跳ね返ってきます。
近年の日本のセダンの中で、ボディデザインが高く評価されている車の1台としてマツダのアテンザが挙げられます。
アテンザのようなボディを5ナンバーサイズ + αまで縮小してエンジンは縦置きのFRとし、排気量は1,800~2,000ccの直噴にして過給機を付けてもいい。トランスミッションはMTを残したい。
可能な限り部品を流用し、ごちゃごちゃと電子制御システムを付けないで価格は250万円以内であれば魅力的。おそらく自動車メーカー内で、そのような企画が浮かび上がっても、大量に売れない理由から廃案とされてきたのでしょう。
成熟社会の関心事は車以外へ向かう
そんなことより、大都市圏で生活する人々はレンタカーやカーシェアリングで車を借りて、旅先で美味い食事でも楽しむ方がよっぽどいいと考える人が増えてきたのかもしれません。
ライフスタイルの多様化により、興味の対象が広がったこともあり、車の存在は以前より1歩も2歩も後退しているのでしょう。
自動車なんて日本全国どこでも溢れかえっています。中古車情報サイトで検索すると、「これでもか」というほど車が大量に流通しています。とかく、生活臭が漂う車が多いのが日本の特徴。
成熟社会にとって、自動車は移動手段の1つという立ち位置なのかもしれません。だったら、使いやすくて経済的なクルマに人気が集まるのは自然の流れなのでしょう。
今となっては、軽自動車やコンパクトカー、ハイブリッドカー、ミニバンが売れ筋の日本では、車は大きな白物家電のような存在なのかもしれません。
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