今や、軽自動車からコンパクトカー、SUV、ミニバン、輸入外車の多くは電動パワーステアリングを採用しています。
この理由は、主に燃費対策。あとコスト面でも有利だと言われます。このような数々の燃費対策の積み重ねにより、メーカーカタログの燃費数値が伸び続けてきました。
次に、高価格車から先進運転支援システムの採用が始まり、自動運転を視野に入れた自動車開発が進む上で、電動パワーステアリングが必須。
しかし、電動パワーステアリングの採用により、車種によっては操舵感/ステアリングフィールに皺寄せが来ています。
運転歴が長いドライバーが「油圧パワーステアリング」から「電動パワーステアリング」搭載車に乗り換えると、ステアリングフィールに違和感を抱くことがありませんか?
管理人も、その一人。
もちろん、ドライバーは電動パワステ車に乗り続ければ順応していくもので、しばらく時間が必要です。しかし、中にはドライバーが違和感を抱き続ける、低レベルな電動パワステ車も存在します。
では、電動パワーステアリングについて深掘りして呟いてみたいと思います。
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電動パワーステアリングが普及した背景
かつての油圧パワーステアリング搭載車は直進時もVベルトでパワステポンプを動かし続ける構造。そもそも、直進時にパワステは不要。
油圧パワーステアリングの構造上、車が直進状態でもパワステポンプを動かし続けています。これは、エンジンパワーの一部がパワステポンプに食われている状態。明らかにエネルギーロスが発生していて、燃費悪化の原因になります。
このような理由から2000年代に入り、電動パワーステアリング搭載車が一気に増えました。直進時、ステアリングのアシストは不要なため、電動パワーステアリングの方が合理的で燃費の面でも有利。
ドライバーがステアリングを操舵した時だけ、モーターに電気を流してステアリングをアシストすればいいのです。表面的には、電動パワーステアリングのメリットが目立ちます。
しかし、一筋縄ではいかないのがステアリングホイールの「操舵感」なのです。
車種で異なる電動パワーステアリングの操舵感
自動車の点検や車検で代車のステアリングを握ると、電動パワーステアリングの味付けが車種によって随分違うことに気付きます。
ステアリングホイールの操舵感が妙に軽い、N付近(センター付近)で固まる、妙な癖がある等、様々なのです。
メーカーが違えば、ステアリングフィールが異なるのは当然ながら、同一メーカーでも、車種によってステアリングフィールが異なります。
電動パワステの金縛り、違和感
N付近の金縛り
多かれ少なかれ、電動パワーステアリング採用車はステアリングのN付近(直進状態)で「金縛り(かなしばり)状態」になる傾向があります。
言い換えますと、ステアリングホイールがN付近で固着するようなフィーリングがあります。
やや「金縛り」を感じる車種もあれば、違和感があまり無いように上手く仕上げてある車種もあります。
この金縛り状態を作り上げることで、自動車の直進性は間違いなく向上します。低偏平タイヤのワンダリング対策として、轍や路面の凸凹を通過してもステアリングが左右に取られにくくなります。
今や車種によっては、純正ホイールとタイヤサイズが17や18インチが標準のため、ワンダリングが出やすい低偏平タイヤの対策として電動パワステが一役買ってます。
ステアリングフィールの違和感
次のデメリットとして、車種によってはステアリングを左右に回していくと、終始ステアリングフィーリングが一定ではありません。
直進時のN付近からステアリングを僅かに動かすと壁感があって操舵が重く、それを乗り越えると軽くなる車種があります。ドライバーのステアリング操作はこうなります。
ステアリングホイールをセンターから少し動かす。(少々、重めの操舵)
↓
ステアリングフィールが軽く変化。
↓
ステアリングを切りすぎてしまう。
↓
ステアリングを少し戻す。
ステアリングホイールが微妙に行ったり来たりを繰り返すのです。ドライバーは無意識にこのような運転操作をしているのです。また、ドライバーが素早く操舵すると、操舵感が変化する車種もあります。
保舵力が必要
電動パワステ搭載の車種によっては、半径が大きいカーブで一定の舵角を保持しながら曲がっていく時、保舵力が必要です。
ステアリングがセンターに戻ろうとする力が大きく、ドライバーは両腕でステアリングをしっかり押さえる必要があるのです。
電動パワステ車の中にはバーチャル感、有り
以上のような人工的な操舵フィーリングは、油圧パワーステアリング搭載車では有り得ません。これらが原因となり、ドライバーは長距離運転で肩や腕に疲労を感じることがあります。
大昔の重ステ車(油圧パワーステアリング非搭載車)の運転は、腕や肩に負担がかかるのは当然でした。「重ステって何?」という方が多いものの、重ステ車の場合、少し車が動いてからステアリングを操作するのがコツでした。
そして、完成度が高いとは言い難い電動パワーステアリング搭載車を運転しても、同様に腕や肩に負担がかかるのです。
更にもう1点、電動パワーステアリングの採用により、路面状況がステアリングホイールに伝わりにくく、バーチャル感が強くなる傾向があると思います。
ドライバーはステアリングホイールからのインフォメーションを通して、路面とタイヤの情報を得ています。
タイヤがマンホールの頭に乗り上げたり、小石を踏んだり、水たまりに差し掛かかった瞬間、それらの情報がステアリングホイールに伝わることで、ドライバーは足元の状況を把握できます。
ドライバーは走行中、無意識ながらステアリングホイールから伝わってくる情報を両手で感じながら、車と無言の会話をしています。
球技に例えるならば、ステアリングホイールはテニスラケットやゴルフクラブ、野球のバットのようなもの。ボールの感触があまり手に伝わってこない道具なんて、気持ち悪くて使い物にならないのです。
タイヤの接地感がステアリングに伝わってこないと、ドライバーは特に滑りやすいウエット路面や雪道で安心感を得られないのです。
電動パワステの感性チューニングに期待
ソフトウエアが電動パワーステアリングのモーターを制御する仕組み。操舵感はプログラミングと各ステアリング系パーツの合わせ込みでブラッシュアップできるのではないでしょうか。
このあたりはテストドライバーによる、更なる感性チューニングと磨き込みが望まれます。
車の出来具合は、このような地味ながら大切なステアリングフィールにも現れます。
とかく、自動車のカタログデータや見た目の最新装備に目がいくかもしれません。しかし、この世のいい車はカタログでは表現できない性能にも手抜きがありません。
一例として、VWゴルフはドイツの大衆車ながら、電動パワステのチューニングが秀逸なのです。今後、日本車の更なるステアリング・フィーリングの向上に期待します。
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