2013年6月、三菱自動車のアイ(i)が生産終了になりました。
アイ(i)は2006年に登場してから7年間にわたり生産され、軽自動車としては異例とも言えるロングライフでした。
背高ノッポの軽自動車ばかりが人気を集めている中、非常に凝った設計のMR(ミッドシップ)の三菱アイ(i)は異色の存在。
そんな理由もあって、管理人がこのブログ記事を書いたのが2013年8月3日。
管理人はトータルで三菱アイを9年間、所有していました。
当初、管理人は3年、3万km程度で車体にガタがくるだろうと高をくくっていました。生まれて初めて管理人は軽を購入したため、車の耐久性に期待していなかったのです。
ところが、頑丈なアイにいい意味で裏切られてきたこともあり、手放すのが惜しくてしまったのです。
そんなこんなの9年間。
既に、三菱アイは過去の車ながら、今も多くの人にとって気になる存在のようです。
そこで、三菱アイとの9年間に及ぶ年月の中で感じてきたレビューをまとめてみたいと思います。
ちなみに、電気自動車のi-MiEV/アイミーブは2020年度内に生産が終了しました。
Contents
異彩を放つボディデザイン
軽自動車はボディサイズと排気量が厳しく規制され、どの軽自動車も外寸は同じ。
軽自動車の室内空間を広げるためには、天井を高くするしかありません。よって、今日の軽自動車はトールワゴンモデルが人気を集めています。
その中で三菱アイ(i)の車高は160cm。
アイは普通のセダンやハッチバック、ワゴンと比べると、ちょっとノッポで頭が一つ飛びぬけた存在。アイのボディを360度、どこから眺めても「卵」を横に倒したようなボディデザインが独創的。
おそらく、アイは世界中の自動車デザイナーから高く評価されたボディデザインに違いありません。
RRに近いMR
アイの最大の特徴はエンジンがリヤに搭載されています。エンジンは前ではなく、後ろに搭載。
独創的なボディデザインを実現するために、フロントにエンジンを搭載できなくなったのでしょう。また開発当時、メーカーが電気自動車i-MiEVも視野に入れていたのかもしれません。
リヤにエンジンを搭載した自動車は歴史上、数少なく、日本車ではHONDA NSX、ビート、S660、TOYOTA MR-2、MR-S、SUBARUサンバーくらいでしょうか。
外車ではポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニといったスペシャルな車ばかり。あと、ルノー・トゥインゴとスマート。
三菱自動車はアイをMR(ミッドシップ)と表現しているものの、アイのエンジンマウントの位置からするとRRに近いMR。リヤのラゲッジルーム空間が天地方向に犠牲になっていて、フロントには12Vバッテリーが搭載されています。
エンジンルームへアクセスするには、まずリヤゲートを開け、次に吸音材付のエンジンカバーを開ける必要があります。
三菱アイのエンジン
三菱アイに搭載されているエンジンは「3B20型」で直列3気筒DOHC、12バルブのMIVEC。排気量は660cc。
駆動方式は2WDと4WD。
管理人のアイはNAエンジンを搭載するモデル。アイの車重は900kgで軽としては重く、登り坂では積極的にアクセルペダルを踏みこむ必要があります。
NAエンジン
38 kW(52PS)/7,000rpm
5.7Nm(5.8kgf・m)/4,000rpm
ターボエンジン
47kW(64PS)/6,000rpm
9.4 Nm(9.6 kgf・m)/3,000rpm
他の軽とは一線を画すシャーシ
アイのシャーシは角形のラダーフレームに近い補強材が車体後部から左右のフロントセクションまで伸び、フロントはサブフレーム付。アイのホイールベースは長いため、車体の曲げ剛性を確保するための設計なのでしょう。
更に、車体フロア下を覗くと、全面アンダーパネルが標準装備。リヤサスペンションは、ごつい鉄パイプ製のドディオン式。
更に、細かく観察していくと、ドライブシャフトが左右等長。4WD仕様のアイはフロントのドライブシャフトも左右等長。世界広しと言えども、まるでレーシングカーのような設計のマイクロカーが他に存在するのでしょうか?
冷却のためのコンデンサーとラジエーターはフロントセクションに装着するしかないため、エンジンの冷却水はラジエーターまで豪華なステンレス製パイプの中を通っています。
このため、アイの冷却水の量は軽自動車としては多めの6L以上。
軽トップクラスのシャーシ剛性&ボディ剛性
三菱自動車はこのシャーシをベースにして、小型スポーツカーや大径タイヤを履く4WDでも作る計画があったのでしょうか。
アイは軽自動車では有り得ないほどコストがかけられたシャーシを持ち、シャーシを含めたボディ剛性感は歴代軽自動車の中でトップクラスだと思います。
そして、アイのタイヤはフロントとリヤでサイズが異なります。
アイは車体後部に重いエンジンを搭載しているため、リヤタイヤのサイズ(175/55R15)はフロントタイヤ(145/65R15)より太く設定されています。これはオーバーステア対策。
特に、RRの場合、コーナーリング中にリヤタイヤが流れ始めると、テールスライドがなかなか収まらない特性があります。よって、RRやMR車はリヤに太いタイヤを履くのが常識。
アイは、まるで小さなRRポルシェのよう。
引き締まったサスペンション
かつて、マガジンで「アイの乗り心地はソフト」という評価が見られました。実際、アイの足は決してソフトとは言えません。むしろ、アイの足は引き締まったサスペンションの部類に入ります。
4本のショックアブソーバーの減衰力は伸び、縮み共に高めで、スプリングもそれなりのレートでしょう。欧州車の乗り味が好みであれば、アイのサスペンションに違和感を抱くことは無いと思います。
車高が高い自動車の場合、ロール量を抑えるためにサスペンションを固めざるを得ません。
そして、アイのリヤには「175/55R15」という、軽自動車としては太い偏平タイヤが純正装着されています。リヤタイヤのグリップ力が上がるため、ロールを抑えるためには、サスペンションを固める必要があります。
アイのような背が高いMR車の場合、サスペンションが欧州車的になる典型例でしょう。
峠道でも安心
アイはアンダーステアが強め。
アイで険しい峠道を飛ばすと、カーブのターンインからフロントタイヤからスキール音が出っぱなしでコーナーを立ち上がっていきます。
アイはRRに近いMRのため、意図的にこのようなステア特性にセットされています。アイは万人が乗る自動車のため、これはメーカーが考えたセットアップの回答。
アイで険しい峠道をそれなりのペースで走行しても、ロール量が抑制されているため、不安要素はありません。
アイの前後重量配分の比率はFront 45:Rear 55。
アイのようなフロントが軽いMRやRRでスムースにカーブを曲がるコツとして、ターンインでブレーキを残していきます。カーブに差し掛かってステアリングを操舵しつつ、ブレーキを残していきます。
フロントタイヤに荷重を与えながらターンインすることで、アイは綺麗に曲がっていきます。フェラーリやポルシェオーナーになったつもりで!?マイクロ・アイをドライブしましょう。
三菱アイ(NA)の燃費
3気筒MIVEC、NAエンジンを搭載するアイの燃費は街乗りで13~14km/L。冬場、近距離走行を繰り返すと、燃費はこれより悪化します。アイの燃費は今時のワゴンRやN-WGNの燃費には及びません。
アイのトランスミッションはATで車重が900kgに達するため、Kとしてはやや重め。また、冷却水の量が6L以上のため、冷却系を含めた冷却損失が大きいのがアイの弱点。
弱点はヒーターの立ち上がり
アイは降雪地域で片道5~10分程度の短距離走行を繰り返すような使用環境には不向きだと思います。「不向き。」と言い切ってもいいです。
何故なら、アイはMR(RR)という構造上、冷却水の量が多く、コールドスタート後の水温上昇が遅いのです。よって、冬場のヒーターが立ち上がるまで少々、時間が必要。
外気温が5℃前後の冬、コールドスタート後、すぐに走り出してヒーターが効き始めるまで7~8分は必要。これは、アイのオーナーのみが実感している真実。
冬季の外気温が氷点下まで下がる地域において、アイのコールドスタート後、ヒーターが効き始めるまで10~15分以上は必要でしょう。これは、かなり辛いと思います。
よって、北陸から東北、北海道の冬季、アイのヒーターの立ち上がりが遅く、しばらくは寒いドライブが続くと思います。
つまるところ、アイは寒冷地には向いていないのです。
あと、三菱アイのタイヤサイズは特殊でスタッドレスタイヤの価格が高め。概して、軽自動車は経済性が優先されるため、アイは降雪地向きではないと言い切ってもいいでしょう。アイに4WD仕様がありますけど。
三菱アイの故障
マフラーのタイコから異音
三菱アイの納車から1年以内にマフラーのタイコから異音が出始めました。保証期間内ということで、ディーラーでタイコを無償交換していただきました。
エアコンコンプレッサーから異音
オドメーターの走行距離が40,000km台でエアコンコンプレッサーから若干の異音が出始めました。
エアコンの機能には問題は無いものの、ディーラーで相談してみました。担当者の話の内容として、保証期間が過ぎているとのことで、有償修理(交換)になるとのこと。とりたてて困る不具合ではないため、エアコンコンプレッサーの交換は見送りました。
ドライブシャフトブーツからグリス漏れ
とある日、エンジンルームの砂埃をブラシで水洗いしていたところ、左ドライブシャフトブーツ周囲に黒い汚れを発見しました。
ドライブシャフトブーツからグリースがわずかに漏れ始めていたのです。ディーラーで相談したところ、ブーツバンドの交換で対応可能とのこと。場所が場所だけに、修理対応していただきました。
三菱アイのバッテリー交換
三菱アイのバッテリーサイズは標準的。バッテリー交換はDIYで簡単にできます。
※信頼性アップならサイズアップ
夏季、アイのATセレクトレバーを「P」に入れてエンジンを止めると、後ろから「ファーン」という回転音が聞こえてきます。最初、誰もが「何?」と思うはず。
実は、アイのエンジンルームに冷却ファンが装着されています。エンジンルームの温度が一定以上に上がると、冷却ファンを回してエンジンルームを冷やす構造。
容量が小さいバッテリーや劣化が進んでいるバッテリーの場合、冷却ファンがバッテリーに負荷を与えます。
対策として、標準サイズの「34B19L」から「44B19L」へサイズアップすることで、バッテリーの蓄電量が増えます。これにより、オーディオやヘッドライト、カーナビ等の電装系が安定動作し、バッテリーの信頼性が向上します。
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三菱アイのエンジンオイル交換
アイは軽自動車にしてはオイル交換時のオイル量が多く、オイルフィルターを交換しなくても「3.2~3.5L」ほど入ります。
一般的に軽自動車のエンジンオイル量は2L + α程度。その場合、軽自動車のオイルは早めに交換したいもの。
オイルパンの容量は少ないより、多い方がオイルの劣化スピードが遅くなります。
アイのNAエンジンのエンジンオイル指定粘度は「5W-30」または「10W-30」。
長年、ディーラーで4,000~5,000km毎に純正オイル「10W-30」を入れてきましたが、1度、ジェームズで「5W-30」の鉱物油を入れてみました。
軽自動車の3気筒エンジンは暖機運転が終了しても微振動がシートに伝わってくるものの、「5W-30」の鉱物油を入れたところ、車内の振動が軽減しました。
エンジンオイルの粘度は取扱説明書の範囲内で好みの問題。エンジンから車体に伝わってくる微振動が気になるならば、アイのNAエンジンに「5W-30」のエンジンオイルを入れてみる価値はあると思います。
三菱アイのタイヤ購入は通販がおすすめ
アイのタイヤは前後共に特殊サイズということもあり、市場の流通量は少なめ。アイ用タイヤの在庫を置いていない店舗が多いと思います。
アイ用のタイヤは生産量の問題なのか、軽自動車用としては割高。メジャーブランドを選択すると、4本で30,000~40,000円が目安。
そして、なぜかアイのフロントタイヤはリヤより摩耗が早い傾向があります。
アイのリヤタイヤは50,000km近くの耐久性があるのに対して、フロントタイヤは20,000kmほどで要交換となります。安全のために、アイのフロントタイヤは20,000km以内で交換すると安心です。
ナンカンNankang AS-1
管理人のアイは近距離専用車ということもあって、タイヤの溝があればOK。ブランドのこだわりはありません。
そこで、前回のタイヤ交換時、通販でタイヤを購入しました。ブランドは「ナンカン/Nankang AS-1」。
このナンカンは台湾メーカーのタイヤ。
前後タイヤ4本の合計金額は¥16,000くらい。これに、送料とタイヤ交換工賃がプラスされます。それでも、メジャーブランドタイヤと比べると約50%OFFでタイヤ交換ができます。
ナンカン/NanKang AS-1レビュー
ナンカンAS-1を履いてドライからウエット路面、高速道路まで実用上まったく問題はありません。アイはアンダーステアが強いため、フロントタイヤは「155/60R15」をチョイス。
AS-1のトレッドパターン▲からも分かるように、AS-1はコンフォートタイヤ。パターンノイズは十分抑えられています。
AS-1はアイの純正タイヤ(ダンロップ)やBS系と比べて、サイドウォールが若干柔らかめで、乗り心地がしなやか。アイの乗り心地にしなやかさを求めるのであれば、選択肢にAS-1を入れてもいいと思います。
そして、気になるAS-1の耐摩耗性はメジャーブランドと比べて若干短いものの、価格が安いためコストパフォーマンスは高いです。ネット界のAS-1の評判でも、コスパの良さが評価されています。
三菱アイのタイヤサイズ
三菱アイの純正タイヤサイズは前後で異なります。
・フロントタイヤのサイズ:145/65R15
・リヤタイヤのサイズ:175/55R15
フロントのタイヤサイズを変更する場合、「155/60R15」も可能。サイズアップで若干、アンダーステアが弱くなります。(タイヤサイズの変更は自己責任でお願いします。)
三菱i(アイ)-フロントタイヤサイズ145/65R15(純正サイズ)
三菱i(アイ)-フロントタイヤサイズ155/60R15(このサイズでもOK)
三菱i(アイ)-リヤタイヤサイズ175/55R15(純正サイズ)
通販で購入したタイヤの交換作業
通販でタイヤを購入する場合、当然「タイヤ交換作業は?」と頭をよぎります。
そこで、タイヤ交換の作業は次のようなサービスが便利です。交換工賃等は問い合わせフォームでお問い合わせください。
まとめ
三菱アイ(i)は軽自動車史上、非常に凝った設計とデザインの車。今をもってしても、アイのボディデザインに古さを感じません。
今後、アイのようなMR(RR)軽自動車は2度と登場することはないでしょう。
しかし、アイは市場で人気のハイトワゴン系、軽自動車の陰に隠れてしまい、人気とセールスが好調とは言い難いものでした。そのような背景もあり、需給バランスの関係でアイの中古価格はリーズナブル。
降雪地以外の方でしたら、頑丈なボディの中古アイを選択肢に入れてみてもいいでしょう。
三菱アイの中古車を探すなら
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[追記]
2017年10月、納車から9年目を迎えた三菱アイ(i)を手放すことにしました。理由として、走行頻度が極端に少なくなったため。
オドメーターは60,000km台を刻んでいたものの、車体とエンジン共に良好でヤレはほとんど感じられませんでした。オイル漏れや滲みの問題もありませんでした。
後日談として、三菱自動車のディーラー担当者の話によると、手放したアイの程度がとてもいいためすぐに売れたそうです。
アイ(i)ちゃん、お疲れさまでした!
[関連記事]
とても良い記事をありがとうございます。
本日拝見しました。参考になりました。ありがとうございました。
>日本車では・・・くらいであろうか。
アイがRRを採用したのには、軽の元祖SUBARU360〜サンバーも強く影響を与えたと思いますよ。
あのサンバーですね!
お邪魔します。
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はじめまして。
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実は当方も、車の入れ替えが気になりはじめていて、どうしたら良いのかとても落ち込んでおりました。
自分もそろそろ本気で選んでみようと思います、ありがとうございます。
このの情報にも説明がありますのでぜひ見てください。
ご丁寧なコメントありがとうございます。
ファーストカー?セカンドカーにアイビバーチェ乗りです。嫁さんはアイ四駆ターボ。開業独立で普通車ワゴンを買った為、元々の愛車ゴルフ6と普通車被りでムダなので維持費の安い軽自動車を探して個性的で走りのしっかりしたアイを買いました。先日も片道300キロ温泉旅行へ一泊二日で出掛けましたが、ゴルフ6並みに疲れず、きびきびクルクル走りを堪能し楽しい旅行でした。燃料も友達と二人乗りで高速、山岳道でも約22km,L 越え。スゲエ‼
他の方の意見でアイを一度愛車にすると、乗り換えしたい車が無いと有りましたが、その通りと思いました。
過走行の車ですが、大事に乗りたいと思います。
生産終了となっている独創的な三菱アイは、今もアイ愛好家の方々にアイされていますね。
今後もアイを大事にしたいですね。
はじめましてyamaです。
アイに乗り続けて11年
13万キロ オーバーに来たところで我が家のアイちゃんにもガタが。。
エアコンが壊れ、それなりに費用もかかるため、
遂にお別れの時がきました。
こちらの記事を拝見しまして、
ついコメントを書きたくなりました。
ほんといい車でしたね!
別れが惜しいですー。
アイの良さを代弁してくれた感じで嬉しかったです。
ありがとうございました。
コメントありがとうございます。
愛車と長い間を共にしてくると、あたかも相棒のような存在。
別れが惜しくなりますね。